相原正明写真夜話 ⅩⅣ

どうしたら写真が上手になるか? 一番よく聞かれる質問。2番目にどうしたらプロの写真家になれるか。これもとてもよく聞かれる質問。実は2つの質問の僕なりの答えはほぼ同じ。答えは大きく分けて2つある。
1つは、何でも撮る事。この世のすべての物は光と影から成り立っている。光と影の形状 あるいはそれが動くか動かないか、その違いぐらいだ。すべての撮影はいろいろなことがクロスオーバーしている。建築撮影の技法や視点が風景にも使える。逆に風景の撮影の技法や視点が建築にも使える。料理の写真が風景に、動物写真が落語の舞台の撮影にも使える。自分でXXX写真家と言い間口を狭くすることはない。

趣味で撮るにしても、富士山しか撮らないではなく、何でも撮るように心がけると、意外な拾い物の瞬間を見つけられる。ようは視点と感覚そしてテク二ックの引き出しをたくさん設けることが大切。これはプロの仕事でも同じ。クライアントはいろいろな条件を出してくる。特に広告では。その場合「僕はこれが撮れません」というのはほぼ、僕はダメなカメラマンなので間口が狭いので使わないでくださいということと同じ(特にカメラメーカーの広告の撮影と作例の撮影はまるで別物。広告の方がはるかにハードルが高い)以前あるカメラメーカーの広告を撮影したとき、オーストラリアの空撮をした。

キャッチフレーズは4億年の大地も美しく撮れます」だった。好評だったので担当者から追加の広告が来た。追加広告は1/8000秒で撮るマウンテンバイクだった。「最速のシャッタースピードの世界もうちの機材は美しく表現できます」というのがキャッチフレーズだった。この場合、担当者は「相原君は動くものは撮れる?」とは聞かない。なぜならプロならば当然撮れるよね、というのが大前提となっている。2週間後、僕はクライアントに希望する作品を収めた。撮れた理由は、モータースポーツやバスケットの撮影をしていた。また羽田で飛行機などを狙い動くものもそこそこ撮れるようにいつも訓練していた。
 ありとあらゆるジャンルが撮れる経験をして、かつ自分の十八番の世界を持つ。広くそこそこ深くそして1ジャンルに関しては頂点を極めるつもりで撮る。これが上達の秘訣でもありプロになる極意。これはカメラの開発ブレーンとしてメーカーからお呼びがかかるときにとても強い。Aという新機種に関して意見をも止まられたとき、プロト機はA1A2A3と3台あり、それぞれ少しづつ異なる。
 この時に、それが自分が一番好きかも大切だがA1だとスポーツによいけど風家には??A2だと機能はすごいけど風景には向かない、A3だと画質はよいけど、機動力が悪くスナップやスポーツには向かないなど、いろいろなケースステディーの評価を下せる。それもクロスオーバーして撮っていたからこそできること。

そして2つ目は基礎をしっかり作り上げること。基礎というのは標準レンズでモノクロで撮って出しでどれだけとれるか?1であげたすべてのジャンルを標準⁺モノクロでこなす。レンズのエフェクトやカラーの色でごまかせない。光と影を如何に切り取るか。これをたくさん経験として積むこと。できればこの条件で人物がどれだけしっかり撮れるか。それが大切だ。基礎が無くても、感性があれば、独自の視点があれば俺はプロになれる。それは大きな間違え。

かの有名なアラーキーさん、実は世間が知らない得な撮影ジャンルがある。白物家電の物撮り。要は冷蔵庫や洗濯機の広告の撮影。しっかりしたライティングと遠近感が備わっていないとできない。彼はフリーランスの写真家になる前に、電通の社員カメラマンで、死ぬほどたくさん家電製品を撮っていたと、広告関係者から聞いた。
ピカソにしてもそうである。彼のオリジナルの木炭デッサンを一度見たことがあるが、とても緻密だった。物が緻密にしっかり見えているからこそ、あそこまで崩した絵が描ける。
だから基礎をしっかり積むこと。
 少し話が戻るが、アラーキーさん電通の時はカメラマンいまは写真家。これはどう違うか。カメラマンの場合はworkつまりお仕事。どちらかと言えばカメラオペレーター。自分の意思よりも、クライアントが白と言ったら、カラスも白く撮らなければならない。それこそ世の中に黒いカラスなんているわけないぐらいの気持ちで撮る。

   

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写真家は完全に生きざま。「家」という1文字がそれを表している。オンリーワンでナンバーワンの物を撮る覚悟。名前を見なくても、作品を見ただけでこの人とわかるオーラーを作品から出さなければならない。代替えかが効かない存在。極論すれば生きざまを写すのが写真家であり、画像を写すのがカメラマン。あるいは肉を切らして骨を切る思いで作品を造り上げるのが写真家、作例を撮るのがカメラマン。
 長くなり話は少しそれましたが何でも撮り経験し引き出しを増やす、そのために基礎をしっかり積む。とても地味なことですがこれが写真の上達方法でありプロの写真家になるための道だと僕なりに考えています。
実は昨年からお読みいただきました「写真夜話」は今回でお終い。今回の話の内容を経験していただき、コロナが落ち着いたらまたB&Wフォト企画さんのワークショップで皆さんとお会いして楽しく撮影したいと考えます。またお会いする時まで、是非腕を磨いておいてください。See you Soon

2021/3/30 ※文章・写真の無断転用・掲載は禁止です。 文章・写真の著作権はすべて相原正明氏に帰属します